デジタル遺品は、故人がスマートフォンやパソコン、クラウド上に遺したデータやアカウント情報の総称です。写真や連絡先、メール、ネット銀行の口座、SNSアカウントなど、対象となる範囲は年々広がり続けています。
こうしたデジタル遺品は、適切に管理されていないと、相続手続きが滞ったり、個人情報の流出といったトラブルの原因になりかねません。その一方で、適切に扱えば、故人の思い出を守り、遺族の手続き負担も大きく軽減できます。
この記事では、デジタル遺品の基本的な考え方から、整理・管理の方法、事前に備えておくべきポイントまでを体系的に解説します。
この記事を読んで分かること
- デジタル遺品の定義と具体例
- デジタル遺品が問題になる理由
- 遺族が実際にできるデジタル遺品への対応方法
- 専門業者に依頼できるケースと費用相場
- デジタル遺品でよくあるトラブル事例とその防ぎ方
- 生前にできるデジタル終活のポイント
また、今すぐ安全で信頼性の高い遺品整理の業者に依頼したい方は「遺品整理の相談所」がおすすめです。
遺品整理の相談所は、お客様のニーズに最適な専門業者をご紹介するサービスです。
お見積もりは無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
デジタル遺品とは何か
デジタル遺品は、故人がスマートフォンやパソコン、クラウド上などに遺したデータやアカウント情報を指します。明確な法的定義はありませんが、インターネットサービスの普及により、その範囲は年々広がっています。
通帳やアルバムのように目に見える遺品と異なり、デジタル遺品は可視性が低く、気づかれにくい傾向があります。重要な情報が放置されてしまえば、相続や解約が滞る原因にもなりかねません。
また、デジタル遺品は若い世代だけの問題ではありません。総務省の調査によると、70代の64.3%がスマートフォンを所有し、約67%がSNSを利用しているとされています。スマホやインターネットは高齢者の暮らしにも深く浸透しており、誰にとっても無関係とは言えない時代です。
デジタル遺品に含まれる主なもの
デジタル遺品にはさまざまな種類があり、対応を誤るとトラブルにつながる可能性があります。以下に、代表的な分類と具体例を整理します。
分類 | 内容例 | 具体例 |
---|---|---|
スマートフォン・パソコン内 | ローカル保存データ | 写真、動画、連絡先、メモ、カレンダー |
インターネットサービス | 会員アカウント | Gmail、X(旧Twitter)、Instagram、Amazon |
金融・決済サービス | デジタル資産 | ネット銀行口座、仮想通貨ウォレット、PayPay残高 |
サブスクリプション |
定額サービス | Netflix、Spotify、iCloud、オンライン新聞 |
クラウドストレージ |
オンライン保存データ | Googleドライブ、Dropbox、Evernote |
パスワード管理 |
ログイン情報の集中管理 | 1Password、LastPassなどのパスワードアプリ |
デジタル終活設定 |
死後のデータ管理設定 | Facebook追悼アカウント、Google無効化管理ツール |
スマートフォン・パソコン・タブレット内のデータ
端末本体に保存されたデータは、もっとも身近なデジタル遺品です。写真や動画、メモ、カレンダー、連絡帳など、日常生活に直結する情報が端末内に収められています。パスコードが解除できない場合は、操作ができずデータにアクセスできなくなります。
クラウドと連携していない機種では、本体を初期化するとデータが完全に失われるため、慎重な対応が不可欠です。
クラウドサービスやSNSアカウント
GoogleアカウントやiCloudなどのクラウドサービスでは、スマートフォンやPCと同期したデータが自動的に保存されています。写真や連絡先、書類、バックアップデータなどが対象です。
端末がロックされていても、クラウドのIDとパスワードが分かれば、他の端末からログインして内容を確認できる可能性があります。
また、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)といったSNSアカウントも、放置すれば不正ログインや個人情報の流出リスクにつながります。
金融・資産関連のデジタル情報
ネット銀行の口座、ネット証券、仮想通貨ウォレット、電子マネーなどもデジタル遺品に含まれます。これらは法的には相続財産として扱われるため、アクセスできなければ相続手続きが進みません。
IDやパスワードが不明なまま放置すれば、資産を把握できずに失念するリスクもあるため、事前に金融情報の整理や共有ができているかが、重要なチェックポイントとなります。
電子メール・サブスク・契約情報
GmailやYahoo!メール、各種ストリーミングサービスなどもデジタル遺品の対象です。とくにサブスクリプション契約は、解約しない限り毎月の料金が発生し続けるため注意が必要です。
契約情報がスマートフォンやクラウド上に保存されているケースも多いため、アカウントの確認と解約手続きを適切なタイミングで行うことが求められます。
なぜデジタル遺品が問題になるのか
デジタル遺品は便利な反面、適切に対処しないとさまざまな問題を引き起こします。主な課題として以下の点が挙げられます。
遺族がアクセスできず、重要な情報が失われる
スマホやPCにロックがかかっていて解除できない、あるいはサービスのID・パスワードが不明な場合、故人の写真や連絡先、銀行口座の詳細などに辿り着けません。
例えば、スマホの連絡先が見られず故人の知人に葬儀の案内を出せないなど、実務的な支障も起こり得ます。二段階認証が設定されているとさらにアクセスが難しく、故人のクラウドデータやメールすら見られずに重要な遺産情報が不明になる恐れがあります。
相続財産なのか判断が難しい
デジタル上の財産は目に見えないため、遺族がその存在や価値に気づかない場合があります。例えばネット銀行の預金や仮想通貨は相続すべき財産ですが、デジタル管理のため認識されにくい面があります。
ポイント・電子マネー・サブスク契約などは法律上の位置付けが曖昧で、資産として相続の対象になるのか判断が迷いやすいです。結果として遺族が見落としてしまい、本来引き継げたはずの資産が消失・失効してしまうリスクもあります。
個人情報やプライバシーが残されたままになる
故人のSNS投稿やメール、クラウド上の写真、検索履歴などプライバシーに関わるデータがそのまま残存してしまう問題もあります。
故人が「他人に見られたくない」と思っていた情報が遺族の目に触れてしまい、心理的な負担や家族間のトラブルを生みかねません。データがネット上に公開されたままだとプライバシーリスクが継続します。
アカウントや契約が放置され、不正や金銭的損失につながる
利用者が亡くなったことをサービス事業者が把握できないケースが多いため、故人のサブスクリプションや有料サービス契約は解約しない限り自動で課金が続いてしまいます。通知がメールやアプリ内だけの場合、遺族はその契約の存在に気づきにくく放置されがちです。
その結果、例えばクラウドストレージやサーバーレンタル料などの料金が払い続けられたり、口座から引き落としが続いて遺族が経済的損失を被る恐れがあります。放置されたアカウントが第三者に乗っ取られて悪用されるリスクも考えられるでしょう。
参照:今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために|国民生活センター
遺族が対応すべきデジタル遺品の注意点
いざ遺族がデジタル遺品に向き合う際には、以下のようなポイントに注意して対応する必要があります。
ロック解除/バックアップ対応が必要なケースがある
故人のスマートフォンやパソコンには写真、動画、連絡先、アプリ内のメッセージなど重要な個人データが多数保存されています。端末にロックがかかっている場合、それらに一切アクセスできなくなるため、故人のパスコードや指紋認証の解除方法を把握することが不可欠です。
逆に、無理にロック解除を試みて端末内のデータを消去してしまうリスクもあるため注意しましょう。また、データが消えないよう専門業者に依頼してでもバックアップを取得することも検討すべきです。
サービスによって削除・引き継ぎルールが異なる
SNSアカウントやクラウドサービスなど各社には、利用者死亡時の対応ルールが定められています。例えばGoogleには「アカウント無効化管理ツール」、Facebookには「追悼アカウント」といった機能があり、生前に設定しておけば死後に指定した人がアカウント管理できる仕組みも提供されています。
サービスによって遺族が削除申請できるか、データを引き継げるかが異なるため、公式のガイドラインを確認し、それに従った手続きを行いましょう。
相続・名義変更・契約解除に関する手続きが必要
ネット銀行や証券口座、仮想通貨、各種サブスク(月額課金サービス)などは故人の死亡に伴い正式な相続手続きや契約解除が必要です。それぞれのサービスで定められた手続きを行わないと、利用料金が引き続き請求されたり、資産が凍結されたままになってしまいます。
解約や名義変更の際には死亡診断書や戸籍謄本などの書類提出が求められるケースもあります。見落としを防ぐためにも、早めに各サービスのサポート窓口に連絡し、必要な手続きを進めましょう。もし手続きが複雑で不安な場合は、相続に詳しい専門家(弁護士や司法書士)に相談することも検討してください。
デジタル遺品の取り扱いは、アクセス制限や個人情報の保護など、専門的な判断を要するケースも少なくありません。遺品整理の相談所では、デジタル遺品の対応を含め、信頼できる専門業者の紹介や手続きの相談を無料で受け付けています。


遺品整理、生前整理、空き家整理、
ゴミ屋敷の片付け、特殊清掃なら
遺品整理の相談所
業者選びにお困りの方には、あなたの気持ちに寄り添った
スタッフが無料で相談・サポートいたします
デジタル遺品に関わるトラブル事例
実際に、デジタル遺品を巡ってはさまざまなトラブルの相談事例が報告されています。国民生活センターに寄せられた主な事例を含めていくつか紹介します。
参照:今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために|独立行政法人国民生活センター
- ネット銀行の口座解約を進められないケース
- コード決済サービスの相続手続きを完了できないケース
- サブスク契約の請求を止められないケース
- SNSアカウントの乗っ取りを防げないケース
- 電子マネーやポイントの不正利用・失効を防げないケース
ネット銀行の口座解約を進められないケース
亡くなった方がネット銀行で口座を持っていたが、故人のスマホにロックがかかっておりログイン情報も不明なため、遺族が解約手続きを進められなかったケースがあります。
スマホの画面ロックは初期化こそできても解除はできず、契約内容を確認できないまま手続きに行き詰まってしまいました。
コード決済サービスの相続手続きを完了できないケース
故人が生前に利用していたQRコード決済アプリの残高を相続しようとしたところ、所定の戸籍謄本や住民票を提出して手続きを始めても事業者からなかなか承認が下りず、1か月以上も残高が不明なまま待たされているという相談もあります。
オンライン専用の決済サービスでは、手続き完了までに時間を要することがある典型例です。
サブスク契約の請求を止められないケース
故人が契約していた月額サービスの解約をしたくてもIDやパスワードが分からずログインできないため、クレジットカードからの自動請求が止められないという事例です。
事業者からも「契約者本人のログイン情報がないとすぐには対応できない」と言われてしまい、不要な支払いが発生し続けました。
SNSアカウントの乗っ取りを防げないケース
長期間放置されていた故人のSNS(例えばFacebook)に第三者が不正ログインし、乗っ取られてしまった例もあります。
アカウントが乗っ取られると、故人になりすました犯人が故人の友人に詐欺メッセージを送るなど二次被害につながる恐れがあります。亡くなった後もSNSアカウントを放置せず、適切に対処する重要性がわかります。
電子マネーやポイントの不正利用・失効を防げないケース
故人が貯めていた電子マネー残高やポイントが、家族がその存在に気づかず有効期限を過ぎて全て失効してしまったというケースです。
電子マネーやポイントは資産価値がありますが、期限があるものも多く、放置すると最終的に相続人が受け取れないまま消えてしまいます。
デジタル遺品トラブルを防ぐ!生前準備と事後対応の進め方
デジタル遺品に関するトラブルを防ぐには、生前の備え(デジタル終活)と万一亡くなった後の適切な対処の両面が重要です。ここでは、それぞれのポイントを解説します。
- 【事前準備】生前にできるデジタル終活のポイント
- 【事後対応】故人のデジタル遺品を整理するときの手順
【事前準備】生前にできるデジタル終活のポイント
デジタル遺品の対応をめぐるトラブルを防ぐには、生前からの備えが不可欠です。ログイン情報や契約内容の整理は、遺族の負担を大きく左右します。
- エンディングノートにデジタル情報を記録する
- 各サービスの「死後の設定」を活用する
- パスワードの適切な管理と共有
エンディングノートにデジタル情報を記録する
紙のエンディングノートや専用アプリを使って、自分が利用している主なデジタル資産やサービスを一覧にまとめておきます。ログインID・パスワード、残高や契約内容の確認方法も記録し、家族しか見られない場所に保管すれば、いざというときにスムーズな確認が可能です。
各サービスの「死後の設定」を活用する
提供元が死後のアカウント管理機能を用意しているサービスは積極的に設定しましょう。
先述のGoogle「アカウント無効化管理ツール」やFacebookの追悼アカウント指定のほか、LINEやAppleなども死亡時のアカウント引き継ぎやデータ消去に関するポリシーがあります。生前にそれらを設定しておけば、亡くなった後に指定された家族がアカウントにアクセスできる場合があります。
パスワードの適切な管理と共有
日頃からID・パスワードを安全に保管し、信頼できる家族に一部共有しておくことも有効です。例えば、主要なパスワードを紙にメモして封筒に入れ、貸金庫や信頼できる第三者に預けておく方法もあります。
もちろんセキュリティには注意が必要ですが、まったく情報が残されないよりは遺族が助かるでしょう。備えが十分にできていれば、いざというときにも慌てず、家族の手で円滑に対応することが可能です。
【事後対応】故人のデジタル遺品を整理するときの手順
デジタル遺品の整理は、パスワードがわからない、契約情報が不明など、予想以上に手間と時間を要することがあります。無理にアクセスを試みるのではなく、正しい手順を踏んで丁寧に対応することが大切です。
- 端末とアカウント情報の洗い出し
- アクセス権限の停止・解除申請
- 各種サポート窓口への連絡と必要書類の準備
1.端末とアカウント情報の洗い出し
故人のスマホ・PCや手帳、メール履歴などから、利用していたサービスやアカウントの洗い出しを行います。どのようなSNSやオンライン口座を持っていたのか、できる限りリストアップしましょう。残された端末を調べたり、郵送物やメール通知からヒントを得ることもポイントです。
2.アクセス権限の停止・解除申請
判明した各サービスについて利用停止やアカウント凍結の手続きを行います。SNSであれば運営会社に連絡してアカウントを削除・追悼にする、金融機関であれば口座を凍結して相続手続きを開始する、といった措置です。
併せて、スマホの回線解約や有料アプリのサブスク解除なども進めます。早めにアクセス権限を止めておくことで、不正利用や課金の発生を防ぎます。
3.各種サポート窓口への連絡と必要書類の準備
各サービスの公式サポートや問い合わせ窓口に、故人が亡くなったことを連絡し、必要な手続きを確認します。その際、多くの場合で死亡診断書や相続関係を証明する戸籍書類などが求められるため、役所で書類を取得する手続きも同時に進めましょう。
サービスごとの指示に従い必要な書類を提出すれば、順次アカウントの解約・名義変更や資産の引き渡しが完了していきます。手順が複雑で困難な場合は無理をせず、専門機関に相談することも検討してください。
まとめ:デジタル遺品の対応に困ったら専門業者に相談しよう
デジタル遺品は放置すると思わぬトラブルを招きますが、生前の備えと適切な事後手続きで回避できます。それでも対応が難しい場合は、無理をせずデジタル遺品に詳しい専門業者や専門家に相談しましょう。家族の負担を軽減し、故人の大切な情報を安心して引き継ぐためにも、早めの対応が重要です。
遺品整理の相談所では、デジタル遺品の整理に限らず、遺品整理や生前整理の相談にも対応しています。初回相談から作業完了まで、経験豊富なスタッフが一貫して丁寧に対応します。遺品整理や生前整理についてお悩みの方は、遺品整理の相談所にお問い合わせください。


遺品整理、生前整理、空き家整理、
ゴミ屋敷の片付け、特殊清掃なら
遺品整理の相談所
業者選びにお困りの方には、あなたの気持ちに寄り添った
スタッフが無料で相談・サポートいたします