スマートフォンやインターネットの普及により、写真データやオンライン銀行口座、仮想通貨などのデジタル資産も故人が残す遺産として注目されています。「デジタル遺産」を整理せず放置すると、相続手続きが複雑化したり家族間のトラブルを招く恐れがあるため注意が必要です。
この記事では、デジタル遺産の基本から、整理方法、相続時の注意点までを解説します。
この記事を読んで分かること
- デジタル遺産の基本的な定義と対象範囲
- なぜデジタル遺産が問題になるのか
- 遺族が実際に取れる対応方法
- 遺言書や相続との関係性、および注意すべき法律面のポイント
- トラブルを防ぐために生前からできる備えの方法
- 専門業者や相談窓口の活用による支援体制
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デジタル遺産とは?
デジタル遺産とは、故人がスマートフォンやパソコンなどに残した財産的価値をもつデータやアカウントを指します。
具体的には以下が該当し、相続の対象になり得る重要な財産です。
デジタル遺産は、存在や中身が本人しか把握していない場合が多く、相続人が適切に引き継げないまま放置されるケースも少なくありません。そのため、財産の取りこぼしや手続きの遅延につながり、遺族間でのトラブルに発展する可能性もあります。
総務省の令和5年通信利用動向調査によると、日本のインターネット利用者は約86%、スマートフォン保有率は約8割に達しています。世代を問わず、多くの人が何らかのデジタル資産を保有していると考えてよいでしょう。
デジタル遺産の整理が重要視される理由
デジタル遺産は可視性が低く、放置されることで相続の手続きや契約の解約が滞る原因になりかねません。財産としての価値や個人情報の重要性を正しく認識し、適切な整理と引き継ぎがなぜ必要とされるのか見ていきましょう。
存在の有無や情報が本人しか把握していない
デジタル遺産は、本人しか存在やアクセス情報を把握していない状態で残されている場合が多いです。家族がIDやパスワードを知らないままだと、口座にログインできず、資産が凍結されるリスクがあります。
実際、国民生活センターへの相談でも、故人が利用していたサービスのログイン情報がわからず、解約や名義変更に困った事例が複数報告されています。
参照:今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために|国民生活センター
相続手続きが複雑化しやすい
デジタル遺産は、遺族が把握できても手続きが煩雑になりやすいという課題があります。相続の対象となる情報にアクセスできても、各事業者とのやり取りには多くの手間と時間がかかるためです。
例えば、故人が利用していたキャッシュレス決済サービスの残高を引き継ぐには、戸籍謄本などの書類を提出したうえで事業者に照会し、回答までに1か月以上要するケースもあります。
また、SNSやメールのアカウントは、利用規約上、相続や第三者の閲覧が認められない場合も多く、内容の確認や削除手続きが困難になることもあります。
参照:今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために|国民生活センター
家族間トラブルにつながることも
デジタル遺産は、相続人間の情報格差や認識の違いからトラブルにつながることもあります。相続手続き完了後に新たな資産が発覚すると、再度の協議や分割が必要になるケースも珍しくありません。
故人が生前に遺言書でデジタル遺産の扱いを明示していなかった場合、誰がどの情報を取得・管理するかを巡って、家族の間で意見が対立しやすいのです。
デジタル遺産の対象になるものとは
デジタル遺産として扱われるものには、大きく分けて金銭的な価値を持つデジタル資産と、契約や権利に関わるデジタル情報の2種類があります。それぞれ具体的に見てみましょう。
- 金銭的価値のあるデジタル資産
- 契約や権利に関わるデジタル情報
- 「デジタル遺品」との違い
金銭的価値のあるデジタル資産
デジタル遺産には、現金同様に金銭的価値を持つデジタル上の財産も含まれます。
以下はデジタル資産の一例です。
- ネット銀行の預金残高
- ネット証券の株式や投資信託
- ビットコインなどの暗号資産
- 電子マネーのチャージ残高
また、クレジットカードのポイントや航空会社のマイルなど商品購入に使えるものも広い意味で資産価値があり、デジタル遺産に含める考え方が一般的です。これらデータでも経済的な価値を持つため、法律上「相続財産」として扱われます。
契約や権利に関わるデジタル情報
デジタル遺品の中には、金銭的な価値はないものの、故人が契約当事者であった情報や個人の権利に関わるデータも含まれます。
例えば、故人が生前に利用していた以下のようなデジタル情報です。
- SNS(交流サイト)のアカウント
- メールアドレスやクラウドストレージ上のデータ
- 各種サブスクリプション(定額課金)サービスの契約情報
これらは直接お金に換えられるものではありませんが、故人の記録や契約として法的な側面を持つものです。多くの場合、利用規約によりアカウントの譲渡や利用継続は認められていません。死亡時に契約終了となりますが、残された家族が解約やデータ削除などの対応を検討する必要があります。
「デジタル遺品」との違い
デジタル遺品は、故人が生前に使用していたスマートフォンやパソコンといった機器本体、保存された写真・動画、アカウント情報など、あらゆるデジタル関連の情報や物品を含む広い概念です。一方で、デジタル遺産はその中でも財産的価値があり、相続や課税の対象となる情報を指します。
言い換えれば、デジタル遺品はすべてのデジタルな「遺されたもの」であり、デジタル遺産はそのうち相続財産に該当する一部です。
以下に、デジタル遺品とデジタル遺産の違いをまとめます。
項目 | デジタル遺品 | デジタル遺産 |
---|---|---|
定義 | 故人が生前に使用していた物理的なデジタル機器やデータの総称 | デジタル遺品のうち、相続の対象になる金銭的価値や権利をもつ情報 |
対象物の例 | スマートフォン、パソコン、タブレット、外付けHDD、USB、写真データ、SNSアカウント | ネット銀行の預金、仮想通貨、証券口座、有料サブスクリプション、ポイント・マイルなど |
相続・法的扱い | 遺品整理の対象。物によっては廃棄・譲渡も可能 | 相続財産に含まれるため、遺産分割や相続税の対象になる |
上記のように、デジタル遺品とデジタル遺産は見た目では区別がつきにくいため、整理や対応の際にはその性質を意識する必要があります。
一部のオンラインゲームやSNSのアカウントには、売買や育成に時間・課金がかかることから、市場で金銭的価値が認められるケースがあります。
ただし、サービスごとの利用規約によっては「相続・譲渡が不可」と定められているため、遺産として扱えるかどうかは個別に確認が必要です。
生前にできるデジタル遺産整理の方法
大切なデジタル遺産をめぐるトラブルを避けるには、生前のうちから整理・対策をしておくことが有効です。具体的には次のような方法が挙げられます。
- 利用中のサービスや資産を定期的に見直す
- 家族や親族に資産の存在を伝えておく
- 情報をエンディングノートや遺言書に記載
- 死後事務委任契約を結んでおく
- デジタル遺産管理サービスを活用する
利用中のサービスや資産を定期的に見直す
自分が利用しているデジタルサービスや保有しているデジタル資産を定期的に棚卸しし、不要なものは生前に整理しておきましょう。
長期間使っていない会員アカウントやサブスクリプション契約は解約することで、余計な出費を減らすとともに、死後に家族が対応する手間も軽減できます。自身でも把握しきれていない口座や課金がないか、定期的に確認する習慣を持つことが大切です。
家族や親族に資産の存在を伝えておく
自分だけしか知らない状態では、デジタル遺産が発見されない恐れがあります。信頼できる家族や親族に、自分が利用しているデジタル資産やサービスの存在を生前に伝えておきましょう。
主要なアカウント名やスマホの解除パスコードなどを紙面や共有ノートにまとめ、家族と共有しておくと安心です。万一の際に速やかに財産を引き継ぐためにも、どんな資産があるか最低限知らせておくとよいでしょう。
情報をエンディングノートや遺言書に記載
自分のデジタル資産の内容やログインID・パスワード、解約方法などをエンディングノート(終活ノート)に整理して記録しておきましょう。そうした記録があれば家族が財産を見落とすリスクを減らし、相続手続きを円滑に進められます。
特に金銭的価値のある資産は遺言書に明記しておけば、誰に引き継ぐかを明確にでき、家族間の争い防止にも有効です。
死後事務委任契約を結んでおく
死後事務委任契約とは、あらかじめ信頼できる第三者(弁護士や司法書士など)と契約を結び、本人の死後に行ってほしい事務手続きを代行してもらう仕組みです。SNSやメールアカウントの削除、有料サービスの解約など、死後のデジタル遺品の整理にも活用できます。
法務省の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」によれば、死後事務委任契約は民法上の例外的な契約とされており、本人の死亡後も効力が継続する点が特徴です。エンディングノートの記載と併用することで、家族が希望に沿って手続きを進めやすくなります。
プライバシーに関わるデータを確実に削除したい場合や、必要な財産だけを引き継ぎたい場合にも有効な手段といえます。
デジタル遺産管理サービスを活用する
最近では、死亡時に備えてデータやメッセージを託せるクラウドサービスも提供されています。
例えば、一定期間アクセスがなかった場合に指定した相手にメッセージやデータを自動送信する仕組みなどがあります。このようなサービスを活用すれば、万一の場合でも家族への連絡やデータの引き継ぎが円滑に行えるでしょう。
デジタル遺産の相続で注意すべきポイント
デジタル遺産を実際に相続する際に注意したいポイントをまとめます。
- 仮想通貨やネット銀行口座は相続できるのか
- ポイントやマイルの取り扱い
- デジタル遺産は相続税の課税対象?
仮想通貨やネット銀行口座は相続できるのか
結論から言えば、ビットコインなどの仮想通貨やネット銀行の預金口座は相続の対象になります。法律上も、被相続人(亡くなった人)の一身専属でない財産権はすべて相続人に承継されると定められており、デジタル資産も例外ではありません。
ただし、相続人が仮想通貨のウォレット情報やネット銀行のログイン情報を把握していない場合、資産を引き出すために取引所や銀行への照会など煩雑な手続きが必要となり、資産が凍結されてしまう恐れもあります。
スムーズな承継のためにも、生前にアクセス情報を整理して共有しておくことが望ましいでしょう。
参照:デジタル財産の相続について|新聞|札幌弁護士会の暮らしに役立つ情報「ニュース&アーカイブズ」
ポイントやマイルの取り扱い
クレジットカードやショッピングサイトなどで貯まるポイント類は相続できません。多くの場合、会員規約で「本人のみ有効」とされており、死亡時に失効してしまうためです。
一方、航空会社のマイルについては、所定の手続きを行えば相続人に引き継げるケースがあります。手続きには期限が設けられていることが多いため、早めの対応が重要です。
また、ポイントやマイルの相続可否は各社の規約によって異なるため、詳細は各社の公式ウェブサイトや規約を確認することをおすすめします。
デジタル遺産は相続税の課税対象?
デジタル遺産も他の遺産と同様に相続税の課税対象です。
例えば、仮想通貨(暗号資産)を相続した場合、その取得は相続税の課税対象になると国税庁のガイドラインでも明記されています。評価は相続開始時点の時価で行われ、他の財産と合算して課税額が計算されます。
デジタル遺産は見落とされやすいため、申告漏れがないよう注意が必要です。評価額が大きい場合は専門家に相談すると安心でしょう。
参照:暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)|国税庁
遺品整理の相談所では、デジタル遺産を含む相続や整理に関する相談を無料で受け付けており、専門業者の紹介にも対応しています。デジタル遺産の扱いに悩んでいる場合は、お気軽にお問合せください。


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まとめ:今からできるデジタル遺産対策を始めよう
デジタル遺産は現代の相続において無視できない存在です。家族に負担や争いを残さないためにも、早めの対策が肝心です。この記事で紹介したポイントも参考に、できることからデジタル遺産の整理を始めてみましょう。事前にデータやオンライン資産の引き継ぎ準備をしておけば、万一のときも安心して家族に託せます。
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