ゴミ屋敷の行政代執行とは?実施される家の特徴から事例や回避方法を解説

ゴミ屋敷の行政代執行とは?実施される家の特徴から事例や回避方法を解説
著者 坂本 貴志

ゴミ屋敷の問題に直面し、行政代執行という言葉を耳にする機会が増えてきました。ゴミ屋敷の状態が続くと、行政代執行によって強制的にゴミを撤去する措置がとられる可能性があります。

ゴミ屋敷の行政代執行が行われた場合、ゴミの撤去費用は、所有者の負担となってしまいます。思わぬ出費を強いられる事態にならないように、行政代執行を回避するための対策を講じておきましょう。

この記事では、ゴミ屋敷の行政代執行の詳細と、それを回避するための実践的な対策について解説します。

この記事を読んで分かること


  • ゴミ屋敷における行政代執行の概要
  • ゴミ屋敷の行政代執行が実施された京都市と蒲郡市の事例
  • 行政代執行を回避する方法
  • ゴミ屋敷の問題を未然に防ぐためのポイント

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ゴミ屋敷の状態が継続すると行政代執行が適用される場合がある

ゴミ屋敷の行政代執行は、近隣住民への迷惑や衛生面の問題を解決するためのもので、対象となるゴミ屋敷には特定の特徴があります。行政代執行が実施されるまでの流れを知り、自分の状況を理解しましょう。

ここでは、以下の3つの観点で解説します。

ゴミ屋敷の状態が継続すると行政代執行が適用される場合がある

ゴミ屋敷の行政代執行とは自治体がゴミを強制撤去する措置

行政代執行とは、法令に基づき、特定の問題に対して自治体が法的権限を用いて強制的に対処するための手続きです。ゴミ屋敷の場合、周囲の住環境や公共の安全に重大な影響を及ぼす恐れがあるため、自治体がゴミを強制的に撤去する措置を指します。

ゴミ屋敷の行政代執行が行われる背景には、ゴミ屋敷が周囲の環境や住民の健康に重大な悪影響を及ぼす場合があります。

  • 悪臭や害虫が発生する
  • 火災の危険性が高まることが問題視される
  • 近隣住民からの苦情が多発する
  • 地域全体の生活環境が著しく悪化する

また、行政代執行によるゴミ撤去にかかる費用は、原則としてゴミ屋敷の所有者(登記簿上の名義人)や占有者(実際に居住している人)が負担します。

参照:行政代執行制度の基本と実務|地方自治研究機構

行政代執行の対象となるゴミ屋敷の特徴

行政代執行の対象となるゴミ屋敷は、著しく衛生上有害となる恐れがある状態、または周辺の生活環境保全のために放置することが不適切な状態であることが必要です。

  • 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
    ・有害危険物質が放置
    ・大量の廃棄物その他の物の保管状況が不良
    ・衛生害虫が発生している(感染症を媒介するねずみ、はえ、ゴキブリなど)
  • 周辺の生活環境保全のため放置することが不適切な状態
    ・悪臭が発生している
    ・火災発生の可能性がある
    ・通路などに大量の廃棄物が堆積していることによる通行障害

このような状況では、近隣住民の健康や生活環境に重大な影響を与えるため、早期の段階での対応が求められます。

参照:「神戸市住居等における廃棄物その他の物の堆積による地域の不良な生活環境の改善に関する条例」に基づく措置の判断基準

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ゴミ屋敷の行政代執行が実施されるまでの流れ

ゴミ屋敷の行政代執行が実施されるまでには、自治体のゴミ屋敷条例と行政代執行法に基づき、以下の手続きを経る必要があります。

1.指導

  • 自治体は、ゴミ屋敷の所有者に対して指導を行う
  • 問題解決を促すための具体的なアドバイスや指導が行われる

2.勧告

  • 所有者が改善しない場合、自治体は勧告を行う
  • 勧告は法的拘束力を持たないものの、改善を促す強い要請となる

3.命令

  • 勧告後も改善が見られない場合、命令が発動される
  • 命令は法的拘束力を持ち、改善義務が発生する

4.戒告

  • 命令に従わない場合、戒告が行われる
  • 戒告は、命令に従わないことに対する警告

5.通知

  • 戒告後、通知が送付されます。

6.行政代執行

  • 最終的に、行政代執行が実施される
  • 自治体が強制的にゴミを撤去する措置が取られる

7.費用の徴収

  • ゴミ撤去費用を支払う
  • 費用を支払えない場合には、国税徴収法に基づく国税滞納処分の手続に従って、所有者や占有者の財産が差し押さえられる場合がある

このような手続きによって、ゴミ屋敷の問題が解決される一方で、大きな経済的負担が生じることとなります。

ゴミ屋敷の行政代執行が実施された事例

全国各地で問題となっているゴミ屋敷ですが、その解消には多くの時間と労力が必要です。自治体や近隣住民の協力を得て、行政代執行という手段が取られるケースも少なくありません。

ここでは、実際に行政代執行が実施された京都市と蒲郡市の事例を取り上げ、問題解決のプロセスや関係者の対応について紹介します。

京都市右京区2015年11月13日

京都市では2014年11月に「京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」が施行され、その条例に基づく行政代執行によってゴミ屋敷のゴミを撤去した事例があります。

京都市内の集合住宅前にゴミが山積みになっていることを受け、京都市はゴミ屋敷対策の条例を初めて適用し、行政代執行によるゴミ撤去を実施しました。

概要 問題の詳細 行政の対応
京都市初の

行政代執行

  • 私道にゴミが堆積
  • 通行の障害および災害時の避難に支障
  • 支援と指導を124回実施
  • ゴミ屋敷条例に基づき代執行令書を手渡し
  • ゴミの撤去を実施

2009年12月に住民から相談を受け、自治体がゴミを撤去するまで5年間もかかり、124回にもわたってゴミの撤去を促しています。ゴミ屋敷の清掃には、近隣住民と自治体が労力と時間をかけて対応しなければならないため、問題解決には多大な努力が必要です。

参照:京都の「ごみ屋敷」を全国初の行政代執行へ 50代男性宅前の私道に高さ2メートルの堆積物|産経新聞

蒲郡市形原町2021年5月18日

愛知県蒲郡市では、2018年に施行した「住居等の不良な生活環境を解消するための条例」に基づいて、初めて行政代執行が実施された事例があります。

概要 問題の詳細 行政の対応
蒲郡市初の

行政代執行

  • 住人の男性がゴミの撤去に応じない
  • 通行の障害
  • 異臭問題の発生
  • 2019年11月から指導
  • ゴミ屋敷条例に基づき撤去命令を出す
  • 400万円の予算でのゴミ撤去を実施

蒲郡市は、このゴミ屋敷を約20年前から把握していたものの、実際には住人男性の家からは約30年前からゴミが表に出てきたといいます。高く積み重なったゴミは、道路にも一部がはみ出し、ゴミが詰め込まれた小屋は壁が膨れてゆがんでいる状況が続いていました。

ゴミ条例の施行によって事態が大きく動き、ようやく解消につながっています。

参照:「ごみ屋敷」の行政代執行開始|東愛知新聞

ゴミ屋敷を行政代執行から回避する方法

ゴミ屋敷に住んでいると、いつ行政代執行が行われるかと不安が尽きないものです。片付ける時間や体力がない、どこから手をつけていいか分からないなど、さまざまな理由があるでしょう。しかし、行政代執行が行われれば高額な費用が発生し、さらに状況が悪化してしまいます。

ここでは、具体的な回避方法を4つ紹介しますので、自分に合った方法を見つけてみてください。ゴミ屋敷の行政代執行から回避する方法は以下の4つです。

ゴミ屋敷を行政代執行から回避する方法

家族や友人と協力して片付ける

ゴミ屋敷の片付けは、基本的にゴミの処分と掃除が必要です。一人で全てを片付けるのは大変な作業なので、家族や友人に協力をお願いしましょう。自治体に、どの程度片付けを行えば行政代執行を回避できるか確認することが重要です。

以下の手順を参考にしてみてください。

  1. 自治体に連絡し、片付けの基準を確認する
  2. 片付けの日程を家族や友人と調整する
  3. ゴミを種類別に分け、処分方法を決める
  4. 必要な道具(マスク、手袋、掃除機など)を用意する
  5. 一緒に片付けを始める
  6. 整理整頓が終わったら、自治体に確認を依頼する

片付けの専門業者に依頼する

ゴミ屋敷の片付けには時間や体力が必要ですが、専門業者に依頼すれば迅速かつ効率的に作業が進みます。

片付けを後回しにしているうちに、行政代執行が行われる可能性もあるため、早めの対応が肝心です。費用はかかりますが、プロならではの手際の良さで短期間で片付けが完了します。

以下は、専門業者に依頼する手順です。

  1. 専門業者を調査し、評判や料金を比較する
  2. 見積もりを依頼し、費用を確認する
  3. 業者と契約を結ぶ
  4. 不要な物品やゴミのリストを作成する
  5. 当日は業者に任せ、作業を確認する
  6. 完了後、自治体に確認を依頼する

ゴミ屋敷専門の不動産買取業者へ売却する

ゴミ屋敷の状態で売却するのは難しいですが、ゴミの撤去が手つかずの場合は、ゴミ屋敷専門の不動産買取業者への売却を検討するのも一つの方法です。

売却することで管理にかかる手間や費用がなくなり、解体費用も不要になります。買取業者と所有者が合意すれば、すぐに売買契約に移行できるため、迅速な解決が可能です。

以下は、売却の手順です。

  1. ゴミ屋敷専門の不動産買取業者を探す
  2. 評判や実績を比較し、業者を選定する
  3. 業者に査定を依頼する
  4. 合意が得られれば、売買契約を結ぶ
  5. 所有権の移転手続きを行う
  6. 売却後、自治体に報告する

空き家になっているゴミ屋敷は解体して更地にする

空き家になっているゴミ屋敷の場合、行政代執行を回避するために解体して更地にする方法もあります。自治体によっては、空き家の解体に助成金を出している場合があり、助成金を受けながら解体すれば、費用面での負担を軽減できます。

以下は、解体の手順です。

  1. 自治体に助成金制度を確認する
  2. 解体業者をリサーチし、見積もりを依頼する
  3. 助成金の申請を行う
  4. 業者と契約を結ぶ
  5. 解体作業を依頼する
  6. 更地にした後、自治体に報告する

ゴミ屋敷の問題を未然に防ぐために心がけるポイント

日常生活の中で、気づかないうちにゴミや不要な物が溜まりがちです。忙しい毎日の中でついつい片付けを後回しにしてしまうことも少なくありません。

しかし、これが続くと、気づいた時にはゴミ屋敷のようになってしまうこともあります。そんな事態を防ぐために、いくつかのポイントを心がけましょう。

ゴミ屋敷の問題を未然に防ぐためのポイントは、以下の3つです。

ゴミ屋敷の問題を未然に防ぐために心がけるポイント

1.定期的な片付けと整理整頓を行う

ゴミ屋敷の問題は、毎日の小さな積み重ねが原因となることが多いです。そのため、定期的に部屋や家全体の片付けを行い、不要なものを整理整頓しましょう。

  • 週に一度の掃除や片付けの時間を設けると、物が溜まりにくくなる
  • 使わない物を定期的に見直し、捨てるかリサイクルに出すことを習慣化する

これにより、常に快適な生活空間を保つことができ、ゴミ屋敷の問題を未然に防ぐことができます。小さな努力の積み重ねが、大きな問題の予防につながるのです。

2.片付けの専門家によるサポートを受ける

ゴミ屋敷の問題は、自分一人で解決するのが難しい場合があります。長年にわたって蓄積されたゴミや不要な物が大量にある場合、一人では手に負えないことも少なくありません。

そんな時は、プロの整理収納アドバイザーや片付けサービスの力を借りるのも一つの方法です。専門家のアドバイスを受けることで、効果的な整理方法や収納術を学び、実際の片付け作業をサポートしてもらえます。

さらに、心理的なサポートが必要な場合は、カウンセラーや精神科医の助言を受けるのも有効です。ゴミが溜まる背景には、ストレスや精神的な問題が関与している場合もあります。

専門家のサポートを受けることで、心の整理も進めることができ、より健全な生活空間を取り戻す手助けとなるでしょう。心理的な問題を解決できれば、再び同じ問題に直面することを防止できます。

3.ゴミの適切な処理方法を学ぶ

ゴミ屋敷の問題を防ぐためには、ゴミの適切な処理方法を知り、実践することが大切です。自治体のゴミ収集スケジュールを把握し、決められた日にゴミを出す、再利用が可能なものはリサイクルに出す、そして有害ゴミや大型ゴミの適切な処理方法を学ぶことが求められます。

これにより、ゴミが家の中に溜まるのを防止できるだけでなく、環境にも優しい生活を送ることができます。適切な処理方法を学ぶことで、毎日のゴミ管理がスムーズに行えます。

まとめ:ゴミ屋敷の行政代執行を防ぐために適切な対策を考えよう

まとめ:ゴミ屋敷の行政代執行を防ぐために適切な対策を考えよう

ゴミ屋敷の問題は、放置することで深刻な事態に発展し、最終的には行政代執行という措置が取られる場合があります。

行政代執行を防ぐためには、早期の対策と継続的な努力が必要です。また、ゴミの適切な処理方法を学び、実践することで日常的にゴミが溜まるのを防ぎましょう。ゴミ屋敷問題を未然に防ぐための意識と行動が、快適な生活環境を維持する鍵となります。

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著者情報

坂本貴志

坂本 貴志

遺品整理の相談所 代表

遺品整理の相談所の代表を務め、廃棄物業界に15年従事しており、遺品整理、生前整理、ゴミ屋敷片付けなどの各種サービスのエキスパート。姉妹サイトでは、一般廃棄物収集運搬業の許可業者のみを紹介する不用品回収のマッチングサイト「不用品回収相談所」を全国展開し、 業界の健全化をビジョンに掲げて事業を運営している。豊富な経験により、個人でも一般廃棄物実務管理者、遺品整理士などの専門資格も取得しており、業界団体の講師や廃棄物業者へのコンサルティングなども務めている。

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